最高裁判所第二小法廷 昭和44年(オ)1235号 判決 1970年4月24日
上告人
沢木満
代理人
青木俊二
被上告人
朝日桝雄
代理人
野村均一
大和田安春
永田水甫
主文
原判決を棄却する。
本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
理由
原判決は、被上告人と上告人との間に作成された名古屋法務局属公証人水越政雄作成昭和四一年第二三三五号金銭消費貸借契約公正証書により、上告人は被上告人に対し被上告人から昭和四一年二月九日利息日歩四銭一厘、遅延損害金日歩八銭二厘、弁済期同年三月一〇日の約定で借り受けた金一〇〇万円を弁済期に弁済しないときは直ちに強制執行を受けることを認諾したこと、および上告人が被上告人に対し右債務の内金二〇万円を弁済したことは、いずれも当事者間に争がなく、右残債務に代えて脱臭剤をもつて代物弁済したことは認めるに足りる証拠がないから、上告人の右残債務はなお存在するものといわなければならないと判断している。
原判決の右認定によれば、上告人は本件金銭消費貸借債務につき内金二〇万円を弁済したのであるから、その弁済により債務の消滅した限度では当然右債務について作成された債務名義である本件公正証書の執行力の排除を求めうるものといわなければならない。
しかるに、原審は、右二〇万円の弁済により元本および利息、損害金の債務の消滅した限度について審理を尽さず、右債務名義全部について執行力の排除を求めえないものとして上告人の本訴請求全部を排斥している。従つて、原判決には、法令の解釈適用を誤り、審理不尽の違法があるといわねばならないから、上告論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。
よつて、前示の点につき更に審理を尽させるため、民訴法四〇七条一項により原判決を破棄して本件を原審に差し戻すこととし、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。(草鹿浅之介 城戸芳彦 色川幸太郎 村上朝一)